港区の尾根道を歩く(1):二本榎通り・旧竹田宮邸・高輪消防署二本榎出張所
- 2018/06/06
- 08:05
港区白金・広尾・プラチナ通りを歩く(1)で「港区はちょっとした山岳地帯」であると書きました。
(二本榎通り)
「山岳地帯」であるからには尾根道があるはずなので、今回はその尾根道を散策してみます。この尾根道は「二本榎通り」と呼ばれ、平安時代からある由緒ある古道です。
江戸時代以前は東側の海岸沿いにつくられた東海道(現第一京浜)は存在しておらず、西側は昼なお暗い谷筋(現桜田通り)で「地獄谷」とも呼ばれていたため、人々はこの尾根道の「二本榎通り」を利用せざるを得ませんでした。このため「古代東海道」とも言われています。
地形的に見ると、ここは武蔵野台地の端にあたり、現第一京浜は武蔵野台地の崖下を走っており、「二本榎通り」はその台地の端の高台を通る道になります。
(古道について)
なお、古道の定義及び特徴については、「古道について(1):古道の定義」、「古道について(2):古道の特徴」で書きましたので、ご関心のある方はこちらの記事をお読みください。
(二本榎通りと池波正太郎)
私はあまり小説を読まないのですが、池波正太郎の書いた小説(鬼平犯科帳)に二本榎通りが舞台になったところがあるそうです。池波正太郎がお好きな方は、このような視点から二本榎通りを歩くのもいいかもしれません。
(品川駅から出発)
まず品川駅から出発します、品川駅の謎を解く(1)で「品川駅は歴史散歩・地形散歩をする時の拠点になる駅」と書きましたが、その拠点駅から出発します。
品川駅高輪口から出て、品川プリンスホテルの横にある柘榴坂(ざくろざか)を登ります。
ちなみに、旧島津公爵邸(清泉女子大学本館):城南五山に残された邸宅でご紹介した「城南五山」の一つの「八ツ山」がこのあたりの高台地区になります。
柘榴坂を数分登ると突き当たりになりますが、ここが「二本榎通り」です。
(グランドプリンスホテル新高輪)
右に曲がるとすぐに「グランドプリンスホテル新高輪」の門があります。
このあたり一帯は、16世紀初め頃に相模国の北条氏と武蔵国の扇谷上杉氏が戦った場所と言われている場所ですが、残念ながら説明板がありませんでした。
二本榎通りとは少し離れますが、「味の素高輪研修センター」横の道を右手に行くと、旧竹田宮邸(現在はグランドプリンスホテル高輪の貴賓館として使われています)があります(品川駅の謎を解く(2)参照)。
(古道と私)
この二本榎通りですが、こんな感じの道です。道幅が狭く、約400メートル離れたところを走っている第一京浜(国道15号線)の賑やかさとは比べ物にならない侘しさで、古道の雰囲気満載です。
それでも、商店がそこそこ立ち並び、人々の活動や往来もそこそこあり、道としての役目を果たしています。
「力も能力もある新しい後輩に現役の道を譲り、裏で侘びしく余生を過ごしているが、そこそこ人様の役にはたっている古道」・・・・ん・・・ん・・・何かと似ているような??・・・そうだ、リタイヤした私と似ているんです!!
私が古道に惹かれるのは、古道と私が重なり合うものがあるからなのか・・・分かりました(笑)。
とまあ、冗談半分・本気半分の道草はこのくらいにして先に進みます。
(日本キリスト教団高輪教会)
二本松榎通りに戻って、更に進むと右手に「日本キリスト教団高輪教会」見えてきます。
この建物は旧帝国ホテルの設計者であり「近代建築の三大巨匠」として有名なフランク・ロイド・ライトの弟子だった高輪教会会員が設計した建築物です。
シンプルですが威厳のある建物です。
祭壇には鳥居のようなものが見えますが、日本的な様式を取り入れたのでしょうか。
(室内の撮影は許可を得て撮影したものです)
(高輪消防署二本榎出張所)
もう少し行くと高輪警察署前の交差点に着きます。まず目につくのが「高輪消防署二本榎出張所」です。ドイツ表現派の名建築と言われています。入り口の上の文字が「署防消輪高」と右から左へと書かれていますが、往時を偲ばせます。
嬉しいことに希望者には内部を見学させてくれます。私もお願いして見学させてもらいました。
写真(左)はアールヌーボー風のガス燈です。「手榴弾消化器」(写真右)という昔の消化器など、多くの珍しい展示物がありました。
(署内の撮影は許可されています)
カーブしながらの大理石の階段も往時を偲ばせます。クラシックな消防車もありました。
(署内の撮影は許可されています)
また、この高輪警察署前の交差点ですが、左右の道路を見るとどちらも下り坂になっていて、この二本榎通りが尾根道だということが実感できます。
この高輪消防署二本榎出張所の道路を隔ててた向かいに「二本榎の由来」の解説板があります。かって旅人の目印となっていた二本の榎があったことが名前の由来だそうです。(続きます)
(関連記事)港区白金・広尾・プラチナ通りを歩く(1)