高村智恵子終焉の地~ゼームス坂散策(1):東小路/平和小路/幽霊坂/レモン哀歌の碑
- 2020/01/21
- 07:19
今回は、品川区大井町にあるゼームス坂を下りながら散策したいと思います。
ゼームス坂は昔からある古道ですが、なぜ「ゼームス」という西洋的な名前なのか、
なぜ高村智恵子がこの地で亡くなったのか、散策しながら解き明かしていきたいと思います。
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(東小路、平和小路:終戦直後の闇市をルーツに持つ飲食店街)
JR大井町駅・東口を出てると、区役所通りがあり、
区役所通りを左に行くと、「ゼームス坂上」交差点に出ますが、
私達は、区役所通りの少し奥にある「東小路」から行ってみます。
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「東小路」は、新宿の「思い出横丁」(俗称ションベン横丁。下の写真)や
渋谷の「のんべい横丁」(下の写真)と同じく、終戦直後の闇市をルーツに持つ飲食店街です。
この「東小路」には、テレビなどでよく紹介されている洋食店「ブルドック」がありますが、これについては別記事(「大井町の名物ドカ盛り洋食屋さん」と「大井町駅前散策」)でご紹介する予定です。
この「東小路」を通り過ぎると、「ゼームス坂通り」の向こうに、同じく闇市にルーツを持つ「平和小路」がありますが、
私達は、この「ゼームス坂通り」を下っていきます。
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(「ゼームス坂と幽霊坂」)
この「ゼームス坂通り」には飲食店が点在していますが、
しばらくすると住宅街になり、「ゼームス坂の碑」がありました。
信号を渡ったって右手に「幽霊坂」があります。
地元の人達には、「幽霊坂」の名前は使わず「ニコニコ坂」と呼んでいるそうです。
そのためか、この坂の標識はありませんでした。
この坂は、「ゼームス坂から幽霊坂」(吉村達也著)というミステリー小説のタイトルにもなっています。
(出典:「ゼームス坂から幽霊坂」(株)双葉社。吉村達也著)
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なお、「幽霊坂」という名の坂は東京都内各所にあります。2つ例を挙げてみます。
下の写真は「港区の尾根道を歩く(3):三田台公園・お化粧地蔵・亀塚公園・御田八幡神社」でご紹介した港区にある「幽霊坂」、
さらに下の写真は千代田区神田駿河台にある「幽霊坂」。
「幽霊坂」の由来は多くの場合、幽霊が出そうなほど薄暗く寂しい地区にあった坂であることが多いのですが、
当時の人のいない寂しい光景を思い浮かべながら散策するとまた違った風景が見えてきます。
また、文京区には、「東大で弥生式土器発見地を探す:サトウハチロー旧居跡/お化け階段/弥生二丁目遺跡」でご紹介した、
登りと下りで階段の数が違うと言われている「お化け階段」があります(下の写真)。
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(三越ゼームス坂マンション)
ここから少し先の左側に、「高村智恵子記念詩碑」という案内板がありますので、ここに入っていきます。
すると左手に、「三越ゼームス坂マンション」があり、その傍らに「ゼームス邸跡地について」という説明があります。
この説明には、この場所がイギリス人のジョン・M・ゼームスの邸宅であったこと、ゼームスは坂本龍馬とも知り合いであったこと、この地で没したことなどが書かれています。
なお、このこの説明板には書かれていませんが、この人物は、急坂であった坂道を私財を投げ売って改修し、緩やかな勾配にして地元の人達に感謝されたそうです。
これが「ゼームス坂」の名前の由来になります。
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(高村智恵子記念詩碑~レモン哀歌)
この「三越ゼームス坂マンション」の向かいに、
「レモン哀歌の碑」があります。
この碑には、高村光太郎の妻・高村智恵子が療養していたゼームス坂病院があったところで、ここで亡くなったことが書かれています。
「レモン哀歌」は死の間際の高村智恵子がレモンを受け取り噛んだ時の瞬間を詠った詩ですが、
その詩板が、古くなったレモンと小銭とともに、「レモン哀歌」の碑の下に置かれていました。
下の写真は、平塚らいてふなどの明治の女性開放運動活動家が発刊した機関紙「青鞜」創刊号の表紙ですが、この絵は高村智恵子が描いたものです。
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(昔ながらの家並み)
この「ゼームス坂通り」には古い家が点在しています。
天理教都南分協会、
見事な看板建築の店(看板建築については「浅草橋→神田散策(2)」、「平成通りを歩く(2)」を参照)、
その隣の自転車屋さんもレトロな造りです。同じ看板建築ですが、銅版がとれた状態になっています。
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もう一つ看板建築のお店がありました。
「ゼームス坂通り」には、「東關森稲荷神社」(とうかんもりじんじゃ)や「馬頭観音」があり、この道が古くからある古道であることを示しています(「古道について(2)」を参照)。
(天龍寺)
ゼームス坂の下には天龍寺があります。
天正5年(1582年)創建の曹洞宗のお寺です。
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ここでゼームス坂は終わりますが、ゼームス坂散策の延長として、次回からは島倉千代子の墓所がある東海寺大山墓地まで行ってみます。
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